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佐藤潤オフィシャルブログ

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新作紹介「岸駒(がんく)の虎」


耳のない虎です。
この作品は岸駒の虎図を僕なりの解釈で描きました。
富山県出身で、上京し一流絵師の仲間入りした江戸時代の画家、岸駒(がんく)は
虎に魅せられた画家です。
当時は解剖学の発展期であり、人体を描くにあたり骨の構造を把握することの重要性が説かれていました。
江戸時代、日本には虎はいませんでしたので、岸駒(がんく)は虎を描くにあたり、中国の商人より虎の頭蓋骨、毛皮、四足を入手し、様々な角度から写生し、
当時まだ誰も見たことのない実物の虎の姿をかなり忠実に描くことに成功しました。
 僕の絵のこの耳のない虎は岸駒だけが描いていたものですので、
個展会場で「これ岸駒(がんく)ですね」とおっしゃる方はかなり、
ツウともいえますし、富山県の方にとって「岸駒の虎」は郷土の誇りと言っても良いでしょう。
 
 なぜ岸駒が虎の姿をほとんど正確に知っていたにもかかわらず、
耳のない虎を描いたのかは不明ですが、僕はそのことに”サイエンス(自然科学)とフィクション(神秘性)の狭間”を感じます。
虎に魅せられた岸駒にとって虎はただの題材ではなく、
なにか崇高な存在だったのではないでしょうか。
 京都・清水寺の西門下の広場に岸駒作の「虎の図」石灯籠があり、
この八方睨みの虎は、毎晩抜け出して池の水を飲みに行くと伝えられています。
一度も見たこともない虎を忠実に描いた岸駒という絵師に僕は惹かれています。

世界にはまだそんなに知られていない動物たちが数多くいます。
僕はそういった動物たちの魅力を伝えていきたいと思っています。

この作品は東京大丸での個展に出展予定作品です。